これまで、小さなお子さんの虫歯を減らすための基本的な知識として、「第1回:ミュータンス菌(虫歯菌)がどのようにして歯面に定着するのか」「第2回:飲食回数やだらだら飲食を管理すること」「第3回:フッ化物塗布を積極的に活用すること」などを解説しました。
そして、第4回の今回は、歯磨き(口腔清掃)について解説したいと思います。
まず、お子さんが、自分で歯磨きを行うことや、「自分の歯を大切にする」という気持ちを育むことはとても大切だと思います。最初は、お子さんのお口の中に、歯ブラシを入れ、慣れてもらうことからはじめると良いでしょう。
そこで歯ブラシ選びについてですが、歯ブラシは年齢(歯列の大きさ)に合ったサイズの、一般的なナイロン毛のブラシを選びましょう(写真1 上段から1〜3段)。歯ブラシのサイズが、歯列の大きさに合わないと、せっかく歯磨きをしても、奥歯までブラシが届いていないことがあります。
また、保護者が仕上げ磨きを行う習慣をつけることが大切です。歯磨きは、歯面の細菌数を減らすための行為ですから、歯磨き習慣があるだけでは、歯面の細菌数を減らすことは出来ません。つまり、「歯磨き習慣があること」≠「適切に歯磨きが出来ていること(歯面の細菌数を減少させること)」だからです。
保護者による丁寧な仕上げ磨きを行うことで、その子の虫歯リスクを軽減させることができます。
〇歯ブラシ・持ち手付フロスを使って、保護者による丁寧な仕上げ磨きをしよう
就寝前には、必ず保護者が仕上げ磨きを行うようにしましょう。保護者による仕上げ磨きを行うことで、虫歯の発症リスクを軽減することが可能です。仕上げ磨きに使用するための、専用の歯ブラシもあります(写真1 最下段)。一度、使っていただくと分かりますが、子供が自分で使用するための歯ブラシよりも、ブラシと持ち手との間の長さが長く、仕上げ磨きするときに、保護者の手が、お子さんの唇に当たったりせず、仕上げ磨きが楽に行えます。
▲写真1 年齢別の歯ブラシ(上段 11~13M)と、仕上げ磨き用ブラシ(下段 14M)
虫歯が出来やすい部位は、歯の溝と歯間部です。歯ブラシを歯面に当てて、丁寧に小さく動かしてプラークを除去しましょう。その時、奥歯の咬み合わせ面の溝、下の奥歯の外側の溝、上の奥歯の外側や内側の溝にも、丁寧にブラシの毛先を当て、プラークを掻き出しましょう。積極的に歯肉を磨く必要はありません。
歯ブラシを丁寧に使用しても、隣り合う歯が接触している部位の歯間部には、歯ブラシの毛先は当たりません。そこは、後述の持ち手付き糸ようじ(デンタルフロス)を使用して下さい。
歯ブラシは使用 1か月での交換が推奨さています。これは、歯ブラシのメーカーや販売店が儲けるために、主張している訳ではありません。
長期間使用すると、ブラシの毛先が広がり、歯面にブラシを当てづらくなるだけでなく、ナイロン毛の弾力が低下し、プラーク除去効率が低下します。つまり、デンタルプラーク(歯垢)を除去するために、歯磨きを行なっているのに、プラークが除去できなくなる訳です。
〇歯間部のプラークは、持ち手付デンタルフロスでお掃除しましょう
歯間部については、持ち手付デンタルフロス(ウルトラフロス®)を使用しましょう(写真2〜3)。歯面のプラークを丁寧に除去しましょう。
とくに歯間の中でも、奥歯の歯間や、上の前歯の歯間は、最も虫歯になりやすい部分です。磨き残しのないよう、丁寧なフロッシングにこころがけましょう。
▲写真2 持ち手付フロス(ウルトラフロス®)は、歯間サイズに合わせて、フロス(糸)の太さを選びます。
そして、1年に2〜3回程度は、歯科医院での検診とともに、歯面清掃や口腔清掃の指導を受けるようにしましょう。