これまで4回にわたり、お子さんの虫歯予防について解説してきました。今回は、最終回として、子供の虫歯と歯列不正との関係について、解説したいと思います。
また、お子さんを持つお母様から、最もよく質問されることに、
「子供の歯並びが気になるとき、何歳頃に相談に連れて行くのが良いのでしょうか?」
という内容があります。この答えの正解は、ケースバイケースということになりますが、実際には、概ね以下の2つのケースに大別されることが多いです。
今回は、これらを踏まえて、虫歯と歯列不正との関係について解説したいと思います。
〇虫歯や歯列不正を放置しない
歯列不正による悪影響のひとつとして、歯磨きがしづらい部位が、虫歯になりやすいことが挙げられます。歯列不正が歯磨きのしやすさを阻害している訳です。
一方で、乳歯の虫歯を放置すると、乳歯間の距離が詰まることから、後続永久歯の萌出スペースが不足し、歯列不正が誘発されるケースがあります。なぜなら、乳歯には、「後続永久歯の生える場所(萌出スペース)を確保しておく」という役割があるからです。
つまり、虫歯と歯列不正は、双方向性に影響する訳です。
ちなみに、指しゃぶり、口呼吸、嚥下や舌の癖など、普段の習慣が歯列不正の一因となるケースもあります。また、口の中に関わる習癖(しゅうへき)は、口腔の成長だけでなく、鼻腔の成長にも影響することが知られていますので、虫歯以外にも注意が必要です。
虫歯については、前回までのブログを参考に、虫歯予防を実践することが推奨されます。
また、歯列不正については、代表的な歯列不正のケースを以下に示し、矯正専門医への適切な相談時期をご紹介します。
1.上下の前歯が生えそろう時期(6〜9歳時)の受診が推奨されるケース
これら(図1〜5)の問題が生じていたら、上下前歯(上前歯4本+下前歯4本=計8本)が永久歯に生え換わる時期(おおよそ6〜9歳の時期)にご相談ください。この中でも、よく生じる歯列不正は、歯が混み合った「叢生(そうせい)(図1)」といわれる状態です。
2.早め(3〜4歳時)の受診が推奨されるケース
一方で、受け口(図6)の傾向がみられたら、早め(3〜4歳くらいの時期)にご相談ください。その理由は、上顎と下顎の成長時期(成長のピーク)が異なるため、早期の治療介入が推奨されるケースがあるからです。
〇健康な歯を多く有する高齢者には、歯列不正が少ない
健康な歯を多く有する80歳以上の高齢者を対象にした調査(*1)では、長期的な視点から、歯列不正が歯を失う原因になり得ることが示唆されています。歯列不正は、口腔清掃を困難にすることだけでなく、不正咬合による咬合負担のアンバランスを引き起こすことなどが、長期的な歯の健康を阻害するからだと考えられます。
また、お口の中の健康が、全身の健康に寄与する点にも注目しなければなりません。
以上で、連載企画「妊産婦さんに読んで欲しい 0歳からの虫歯予防」を終えたいと思いますが、これから産まれてくる赤ちゃんがいるご家庭や、小さなお子さんのいるご家族の方には、正しい知識を持って頂きたいです。また、お子さんが小さな頃から、健康な歯を大切にする気持ちを育み、虫歯予防に取り組んで頂くことで、小さな子供の虫歯が、一本でも減少すると嬉しいです。
<参考文献>
*1:竹内史江ほか Dental Prescale®を用いた8020達成者の咬合調査 歯科学報 2005; 105: 154-162