歯が生えたばかりのお子さんが、これから虫歯にならないようにするため(虫歯になるリスクを軽減するため)には、どんなことに注意したら良いでしょうか?
「虫歯が無いか診て欲しい」と、産まれて初めて歯科を受診される小さなお子さんに、虫歯が見つかることがあります。そんな時、一緒に来院される保護者の方は「一生懸命、歯磨きを頑張ってきたんですが。。。。」と肩を落とされることが、しばしばあります。
しかし、この保護者の方のご意見は、虫歯の発症を考える上で、とても大切なポイントだと言えます。なぜなら、歯磨き(=歯の表面の細菌数を減らすこと)と同様に、飲食習慣に配慮すること(=虫歯菌に頻繁にエサを与えないこと)も非常に重要だからです。
そこで今回は、「虫歯ができやすい飲食習慣」と「虫歯ができにくい飲食習慣」について解説したいと思います。
〇飲食回数を制限し、だらだら飲食をやめよう!
赤ちゃんに歯が生え始めると、その歯面には歯垢(デンタルプラーク)が付着するようになります(前回のブログ参照)。
そして、そのプラークの中には沢山の虫歯菌(ミュータンス菌)が存在します。
ミュータンス菌は糖質を代謝し酸を産生するので、飲食後のプラークは酸性(図1:水素イオン濃度(pH)が低下した水色の領域)になります。プラークが酸性になると、それによって歯面の脱灰(歯の成分の溶出)が生じます。
要するに、「飲食により口の中に糖質が入る」→「ミュータンス菌が糖質を分解し、酸を作る」→「酸によって、歯の成分が溶ける」という風です。
一方で、唾液にはpHを中性(図1:黄色の領域)に押し戻し、歯面を再石灰化(歯の成分の修復)するはたらきがあります。
つまり、脱灰と再石灰化のバランスが崩れ、日常的に「脱灰>再石灰化」の状態が継続されると、虫歯が生じるのです(*1)。
▲図1 飲食回数が少ない場合(左)に比べ、飲食回数が多い場合(右)は「脱灰>再石灰化」の状態となり、虫歯の発生リスクが顕著に高くなります(高橋信博 う蝕の原因になる甘味料. 歯科衛生士 2014; 38: 32-33 より引用)
これらことから、飲食後に口腔清掃を行うことと共に、飲食回数とだらだら飲食を制限する(プラークが酸性になる回数と時間を減少させる)ことが大切であることが分かります。
具体的に、虫歯が出来やすい飲食習慣の例として、「哺乳瓶やペットボトルで、ちょくちょくジュースを飲む」「アメなどを口にしながら遊ぶ習慣がある」「お菓子をだらだら食べる習慣がある」などが挙げられます。
ここで大切なのは、飲食に対する考え方です。「ジュースを飲んではいけない」「お菓子は食べてはいけない」というのではないのです。「小まめな水分補給は、お茶やお水に変更し、ジュースは決められたおやつの時刻に飲む」「お菓子は決められたおやつの時刻に食べて、その後に歯磨きをする」などのルール作りが大切だということです。
<参考文献>
*1:Effects on Plaque Acidogenicity of Salivary Factors and Frequency of Between-Meal Eating. J Dent Health 1986; 36: 103-109