2026年8月18日

宇都宮で睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療|エビデンスベースで解説|保険・医科歯科連携・適応について

栃木県宇都宮市平松3丁目の歯医者「亀井歯科・矯正歯科」の院長の亀井(日本歯科専門医機構認定 歯周病専門医)です。最近、「睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置は作ってもらえますか?」という問い合わせが増えてきたので、このタイミングで睡眠時無呼吸症候群についてエビデンスベースのブログ記事を書こうと思います。((※補足:歯並びを治すマウスピース矯正とは別の治療です))

「家族にいびきを指摘された」
「しっかり寝たはずなのに、昼間どうしても眠くなる」
「朝起きたときに口が渇いている、頭が重い」

こうした心当たりがある方は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)の可能性があります。

GBP投稿睡眠時無呼吸マウスピース

今回のブログ記事では、睡眠時無呼吸症候群について、国内外の診療ガイドラインや主要な医学論文をもとに、はじめての方にもわかるように整理しました。専門用語には説明を添えていますので、気になるところから読んでいただいて構いません。歯科医院として、とくに口腔内装置(マウスピース)による治療の位置づけを、ていねいにお伝えします。なお、睡眠時無呼吸にはいくつかのタイプがありますが、この記事では最も多い「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」を中心に説明します。

1. 睡眠時無呼吸症候群とは何か

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が繰り返し止まったり、浅くなったりする病気です。

多くは「閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)」と呼ばれるタイプで、眠っているあいだに舌の付け根やのどの奥の筋肉がゆるみ、空気の通り道(気道)が狭くなったり塞がったりすることで起こります。

呼吸が止まると体は酸素不足になり、脳が「危ない」と判断して一瞬目を覚まさせます。ご本人にはその自覚がほとんどありませんが、これが一晩に何十回、重い方では何百回と繰り返されます。

その結果、眠っている時間は十分でも、睡眠の質は大きく損なわれているという状態になります。「寝たのに疲れが取れない」という感覚の正体は、ここにあります。

重症度は「無呼吸低呼吸指数(AHI)」という数字で表します

検査では「無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)」という指標を使います。これは1時間あたりに、呼吸が止まる・浅くなる回数のことです。

AHI(1時間あたりの回数) 重症度
5〜15回未満 軽症
15〜30回未満 中等症
30回以上 重症

なお、このAHIは重症度の目安を示す数値です。実際に「睡眠時無呼吸症候群」と診断されるかどうかは、AHIの数値だけでなく、日中の強い眠気などの症状も合わせて医科で判断されます。

いびきは、睡眠中に気道が狭くなり、周りの組織が振動して起こる音です。睡眠時無呼吸を疑う手がかりの一つですが、いびきがあるからといって必ず無呼吸があるわけではなく、逆に、いびきが目立たなくても無呼吸が隠れていることもあります。

2. どれくらいの人がかかっているのか

決して珍しい病気ではありません。

2019年に医学誌 The Lancet Respiratory Medicine(英国の呼吸器分野の専門医学雑誌)に掲載された、世界の有病率を推計した研究によると、30〜69歳の成人のうち、軽症以上(AHI 5以上)の閉塞性睡眠時無呼吸を持つ人は世界で推計約9億3,600万人、中等症以上(AHI 15以上)は約4億2,500万人と報告されています。

Benjafield AV, et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med. 2019;7(8):687-698. より引用
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31300334/

これは世界の有病率を系統的に推計した最初の研究とされ、国によっては有病率が50%を超えると報告されています。なお、この人数は検査上の指標(AHI)にもとづく推計で、症状の有無は問わずに数えたものです。そのため、該当する人すべてが治療の必要な状態というわけではありません。

一方で、この病気は気づかれにくいという特徴があります。症状が眠っている間に起きるため、ご本人には自覚がなく、ご家族の指摘ではじめて疑うケースが少なくありません。

3. こんなサインはありませんか?(セルフチェック)

以下に思い当たるものがないか、確認してみてください。

夜間のサイン(ご家族に指摘されることが多いもの)

  • 大きないびきをかく
  • いびきが途中で止まり、しばらくして「ガッ」と再開する
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると言われたことがある
  • 何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
  • 寝相が悪い、寝汗をかく

日中のサイン(ご自身で気づきやすいもの)

  • 朝、起きたときに口やのどが渇いている
  • 起床時に頭が重い、頭痛がする
  • 熟睡した感じがしない
  • 日中に強い眠気がある(会議中、運転中など)
  • 集中力が続かない、疲れやすい

体質・体格に関するリスク

  • 肥満、または最近体重が増えた
  • 首が短い、太い
  • 下あごが小さい、後退している
  • 扁桃が大きい、鼻づまりが慢性的にある

なお、やせている方でも睡眠時無呼吸は起こります。日本人を含むアジア人は、欧米人と比べて顎が小さく気道が狭い傾向があるため、肥満がなくても発症することが知られています。「太っていないから大丈夫」とは言い切れません。

これは診断用のチェックリストではなく、当てはまる数だけで睡眠時無呼吸の有無を判断できるものではありません。ただし、複数当てはまる場合は、一度、医科にて検査を受けることをおすすめします。

4. 放置するとどうなるのか

ここは、正確にお伝えすべき部分です。「治療すればすべての病気が防げます」といった説明は、現在の医学的な根拠を超えてしまいます。2026年8月現在、わかっていることと、まだ結論が出ていないことを分けて説明します。

わかっていること(2026年8月現在)

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、糖尿病、心房細動などの生活習慣病や循環器疾患と関連することが多くの研究で示されています。また、日中の強い眠気は交通事故や労働災害のリスクにつながるため、日本のガイドラインでも運転に関する項目が独立して設けられています。

日本呼吸器学会・厚生労働科学研究班 監修『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』より引用
全文PDF:https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf

このガイドラインは6章・36のクリニカルクエスチョン(臨床上の疑問)で構成され、診断・治療のほか、患者さんの車の運転やCPAPの遠隔モニタリングまで扱っています。

まだ議論が続いていること(2026年8月現在)

「CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法、シーパップ)による治療をすれば心筋梗塞や脳卒中を防げるのか?」という点については、実は結論が出ていません。

2016年に New England Journal of Medicine(NEJM/米国のニューイングランド医学誌)で報告された大規模ランダム化比較試験(SAVE試験)では、中等症〜重症の閉塞性睡眠時無呼吸があり、すでに心血管疾患を持つ患者さんにおいて、CPAP治療を加えても心血管イベントの発生は減少しませんでした(ただし、この試験ではCPAPの平均使用時間が1晩あたり約3.3時間と短めだった点が指摘されています)。

McEvoy RD, et al. CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med. 2016;375(10):919-931. より引用
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27571048/

ただし、この結果には続きがあります。2023年に JAMA(Journal of the American Medical Association/米国医師会が発行する医学雑誌)で発表された、3つの大規模試験(SAVE・RICCADSA・ISAACC)の個々の患者データを統合した解析では、CPAPをしっかり装着できていた患者さんでは、心血管イベントの再発リスクが低下していたことが示されました。

Sánchez-de-la-Torre M, et al. Adherence to CPAP Treatment and the Risk of Recurrent Cardiovascular Events: A Meta-Analysis. JAMA. 2023;330(13):1255-1265. より引用
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37787793/

この研究が示したのは、「CPAP治療を継続して使えるかどうかが、結果に関わっている可能性がある」ということです。

ただし、ここには注意も必要です。これは治療をきちんと続けられた人だけを取り出して解析したもので、真面目に装置を使い続ける人は、服薬や食事・運動といった生活習慣にも気をつけている傾向があります(healthy-adherer bias=健康行動バイアス)。そのため、「CPAPを続けたこと」だけが結果を良くしたと因果関係を断定するのは難しい、という考察があります。

なお、この研究はあくまでCPAPに関する解析であり、口腔内装置(マウスピース)でも同じように心血管の病気を防げる、という意味ではありません。

5. 検査・診断はどう進むのか

【重要】睡眠時無呼吸症候群の診断は、医科(内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠外来など)で行います。当院ではSASの確定診断は行っていません。保険による口腔内装置治療は、SASを診断・治療している医科の医療機関からの診療情報提供(紹介状)に基づいて行います。

ステップ1:医科の医療機関による簡易検査(自宅でできます)

指と鼻にセンサーをつけて一晩眠り、血中の酸素濃度や呼吸の状態を記録します。装置を郵送で受け取り、自宅で行える医療機関が多くなっています。なお、簡易検査では、機器によってAHIに近いREI(呼吸イベント指数)という数値で評価することがあり、精密検査(PSG)のAHIと同じ数字として単純に比べられない場合があります。

ステップ2:医科の医療機関による精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査/Polysomnography:PSG)

簡易検査の結果によっては、より詳しい検査に進みます。脳波や筋電図なども含めて睡眠の状態を総合的に測定するもので、1泊の入院で行われるのが一般的です(自宅で実施できる施設もあります)。

保険適用について

ここで大切なのは、歯科で口腔内装置(マウスピース)を保険で作る場合も、まず医科での検査と診断が必要という点です。紹介状(診療情報提供書)なしに、保険で口腔内装置を製作することはできません。「いびきが気になるから歯科でマウスピースを作りたい」という場合も、順番としては医科の検査が先になります。

保険適用の可否は、医科での診断、検査結果、口腔内装置治療の依頼内容などをもとに個別に判断されます。数値の目安として、歯科の口腔内装置はAHI 5以上とされています。医科のCPAPについては、2026年6月の診療報酬改定で保険適用の基準が緩和され、精密検査(PSG)でAHI 15以上、簡易検査でAHI 30以上が目安となりました(AHI 15以上でCPAPを始める場合は、日中の強い眠気や起床時の頭痛などの自覚症状があり、日常生活に支障が出ていることなどが要件とされます)。

ただし、これらは主に保険で算定するための基準であり、治療が必要かどうかの医学的な線引きをこの数字だけで決めるものではありません。また、口腔内装置も「AHI 5以上」というだけで歯科が独自に保険治療を始められるわけではなく、医科での診断と、歯科への診療情報提供(紹介状)が前提になります。基準は改定で変わることがあり、実際の適用は検査方式や算定条件によっても変わりますので、最新の扱いは医科への受診時にご確認ください。

日本睡眠歯科学会 教育要綱:https://jadsm.jp/iryo/guideline.html

6. 治療にはどんな方法があるのか

治療法は一つではありません。重症度、体格、あごの形、生活習慣、そしてご本人の希望によって選択します。

① CPAP(持続陽圧呼吸療法)

鼻に装着したマスクから空気を送り込み、その圧力で気道が塞がらないように広げ続ける治療です。中等症〜重症の閉塞性睡眠時無呼吸に対する標準治療とされ、無呼吸を抑える効果が高い方法です。

課題は継続のしやすさです。マスクの違和感、乾燥、圧迫感などから、使い続けられない方が一定数いらっしゃいます。2023年のJAMA(前述)で示されている通り「CPAP治療は、継続できるかどうかが重要」ということです。

② 口腔内装置(Oral Appliance:OA/スリープスプリント、通称マウスピース)

下あごを前方に保った状態で眠るためのマウスピースを装着する治療です。効果や副作用をみながら前方への位置を少しずつ調整できる、一人ひとりに合わせて作る装置(カスタムメイド)が用いられます。このように下あごを前に出すタイプは「下顎前方移動装置(Mandibular Advancement Device:MAD)」とも呼ばれます。下あごが前に出ることで、その後ろにある舌の付け根も前方に移動し、気道が広がります。歯科医院で製作します。

米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine/AASM)と米国歯科睡眠医学会(American Academy of Dental Sleep Medicine/AADSM)による初の合同ガイドラインでは、CPAPに耐えられない、あるいはCPAP以外の治療を希望する成人の閉塞性睡眠時無呼吸の患者さんに対して、口腔内装置を用いることが推奨されています。またこのガイドラインは、睡眠時無呼吸が除外され、医科で単純ないびき(原発性いびき症)と評価された成人に対しても、治療の選択肢として推奨しています。

Ramar K, et al. Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy: An Update for 2015. J Clin Sleep Med. 2015;11(7):773-827. より引用
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26094920/
全文PDF(無料):https://aasm.org/resources/clinicalguidelines/oral_appliance-osa.pdf

このガイドラインは51編の論文をシステマティックレビューし、メタ解析とGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation:エビデンスの質を評価する国際的な手法)によって推奨度を決定したもので、医師と歯科医師が連携して治療にあたることを明確に支持しています。

なお、日本国内でも日本睡眠歯科学会が口腔内装置に関する診療ガイドラインを作成しており、Minds(日本医療機能評価機構)に収載されています。

日本睡眠歯科学会『閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置に関する診療ガイドライン(2020年版)』より引用
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00566/

③ 減量・生活習慣の改善

肥満がある場合、減量は根本的な改善につながる可能性があります。また、就寝前の飲酒は気道の筋肉をゆるめるため、無呼吸を悪化させます。睡眠薬の使用についても、主治医とご相談ください。

④ 体位療法

仰向けで眠ると舌が重力で落ち込みやすくなります。横向きで眠ることで改善する方もいます(体位依存性のタイプ)。

⑤ 外科的治療

扁桃肥大などの明らかな原因がある場合には、耳鼻咽喉科での手術が選択肢になります。なお、鼻づまり(鼻中隔弯曲など)に対する手術は、それだけで無呼吸が十分に改善するとは限らず、鼻呼吸やCPAPの使いやすさを改善する目的で行われることもあります。

7. CPAPとマウスピース、どちらがよいのか?

もっとも多いご質問です。研究結果を素直に読むと、単純な優劣では語れないことがわかります。

無呼吸を抑える力は、CPAPのほうが上

ランダム化比較試験を統合したメタ解析では、無呼吸を減らす効果そのものはCPAPのほうがマウスピースより優れており、同じ試験のなかで直接くらべると、CPAPのほうが1時間あたりのAHIを平均で約7.0回分多く減らせたと報告されています。

Sharples LD, et al. Meta-analysis of randomised controlled trials of oral mandibular advancement devices and continuous positive airway pressure for obstructive sleep apnoea-hypopnoea. Sleep Med Rev. 2016;27:108-124. より引用

無呼吸そのものを抑える力は、CPAPのほうが優れています。

ところが、日中の眠気や生活の質では差がつきにくい

同じ解析で、日中の眠気を測る「エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale:ESS)」のスコアには統計学的な有意差がありませんでした。

さらに別のシステマティックレビュー・メタ解析では、報告された使用時間は、CPAPのほうがマウスピースより1晩あたり約1.1時間短かったと報告されています(p=.004)。ただし、とくにマウスピースの使用時間は自己申告にもとづく研究が多く、両者を同じ方法で測って比べた結果ではない点には注意が必要です。著者らは、AHIの改善はCPAPが優れているにもかかわらず、生活の質などの面で差が出にくい理由を、この使用時間の差から考察しています。

Schwartz M, et al. Effects of CPAP and mandibular advancement device treatment in obstructive sleep apnea patients: a systematic review and meta-analysis. Sleep Breath. 2018;22(3):555-568. より引用
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29129030/

つまり、こういうことです

どれほど効果の高い装置でも、使えなければその効果は得られません。逆に、効果がやや穏やかでも受け入れやすく毎晩使い続けられれば、結果として役立つことがあります。「実際に使い続けられるかどうか」は、治療法を考えるうえで大切な視点の一つです。

ただし、どちらの治療が適しているか、また十分な効果が得られているかは、患者さんの好みだけで決まるものではありません。重症度、夜間の低酸素の程度、日中の眠気、高血圧や糖尿病などの併存症、あごや歯の状態などを踏まえて、医科の主治医が判断し、治療後の睡眠検査で効果を確認します。口腔内装置を選ぶ場合も、この医科の判断と確認が前提になります。

8. 歯科医院が関わる理由と、医科歯科連携の流れ

「なぜ歯医者で睡眠の治療を?」と思われるかもしれません。理由は明快で、口腔内装置は主に上下の歯に装着して下あごを前方に保つ装置であり、歯や歯ぐき(歯周組織)、あごの関節、かむ筋肉への影響を確認しながら使う必要があるからです。

装置を安全に使うためには、次のような口の中の条件を確認する必要があります。

  • 装置を支えられるだけの歯が残っているか
  • 歯周病が進行していないか(グラグラした歯に力がかかると悪化します)
  • 顎関節に痛みや異常がないか
  • むし歯や不適合な詰め物がないか
  • 下あごを前に出せる範囲がどの程度あるか

とくに歯周病は重要です。装置は毎晩、歯に持続的な力をかけます。歯を支える骨が減っている状態では、装置の使用が負担になることがあります。装置を作る前に、お口の状態を整えておくことが、長く安全に使い続けるための前提になります。

実際の流れ(④以降は口腔内装置が選択された場合)

  1. 医科を受診(内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠外来など)【医科】
  2. 簡易検査、必要に応じて精密検査(PSG)【医科】
  3. 診断と治療方針の決定(CPAP/口腔内装置/その他)【医科】
  4. 口腔内装置を選択する場合、医科から歯科へ診療情報提供書(紹介状)【医科⇒歯科】
  5. 歯科でお口の状態を確認し、必要な治療を行ったうえで装置を製作【歯科】
  6. 装着後、下あごの前方移動量を調整(一度で完成ではなく、数回の調整が必要です)【歯科】
  7. 医科で治療効果を再検査し、効いているかを確認【歯科⇒医科】
  8. 定期的なチェック(装置の劣化、かみ合わせの変化、歯周病の管理)

先ほどのAASM/AADSMガイドラインでも、口腔内装置で治療を受ける患者さんは、歯科医師と睡眠専門医の両方を定期的に受診することが推奨されています。作って終わりではなく、継続的な管理がセットになる治療だとお考えください。

9. 口腔内装置は、どんな方に向いているのか(適応と限界)

ここまで、口腔内装置(マウスピース)という選択肢についてご説明してきました。ただ、大切なのは「すべての方に最適な治療ではない」という点です。効果にも限界があり、向き・不向きがあります。誠実にお伝えします。

向いていると考えられる方

国内外のガイドラインを踏まえると、口腔内装置は主に次のような方が候補になります。

  • 軽症〜中等症の閉塞性睡眠時無呼吸と、医科で診断された方
  • CPAPを試したが、どうしても続けられなかった方
  • CPAP以外の治療を希望され、医科の主治医もそれを妥当と判断した方
  • 単純ないびき(原発性いびき症)で、医科の評価を受けた方

上記でご説明したとおり、口腔内装置は「無呼吸を抑える力」ではCPAPに一歩譲ります。そのため、いきなり第一選択になるというより、医科の診断と方針のなかで位置づけられる治療だとお考えください。

慎重な検討や、事前の歯科治療が必要な方

口腔内装置は歯とあごで支える装置です。「8. 歯科医院が関わる理由と、医科歯科連携の流れ」でも触れましたが、お口の状態によっては、そのままでは作れない・作らないほうがよい場合があります。

  • 装置を支える歯の数が少ない方
  • 歯周病が進行している方(グラグラした歯に持続的な力がかかると悪化します)
  • 顎関節に強い痛みや異常がある方
  • 口を開ける範囲、下あごを前に出せる範囲が小さい方
  • 重症の睡眠時無呼吸と診断されている方(この場合はCPAPが標準治療です。ご自身の判断でCPAPを中止しないでください)

こうした場合は、装置を作る前に歯科での治療や、医科との相談が必要になります。

あらかじめ知っておいていただきたい「限界」

  • 装置を入れても、無呼吸や夜間の低酸素が十分に改善しないことがあります。だからこそ、装着後に医科で効果を確認する検査が欠かせません。
  • 長く使ううちに、かみ合わせがわずかに変化したり、歯が動いたり、あごに違和感が出たりすることがあります。定期的な歯科でのチェックは、その管理のためにあります。
  • 装置を調整している期間中は、まだ十分な効果が得られていないことがあります。日中の強い眠気が残っているあいだは、運転などに注意が必要です。

「作れば終わり」ではなく、医科と歯科の両方で経過を見ながら続けていく治療である──この点が、口腔内装置をご検討いただくうえでいちばん大切なところです。

なぜ「歯ぐきの健康」がそれほど大切なのか

くり返しになりますが、口腔内装置は毎晩、歯に持続的な力をかけ、その力は歯を支える歯ぐきや骨(歯周組織)にも伝わります。そのため、歯周組織が健康であることが、装置を長く安全に使い続けるための前提になります。歯周病が進んだまま装置を使うと、かえって歯や歯周組織に負担がかかることがあります。

私(当院院長)は、歯周病を専門とする歯科医師(日本歯科専門医機構認定 歯周病専門医)です。口腔内装置による治療をお引き受けする際も、まず装置を支える歯ぐきと歯の状態を確認し、必要な歯周治療を整えたうえで製作へ進みます。装置を使い始めたあとの歯ぐきの管理も、同じ考え方で継続してお手伝いします。詳しい院長の経歴は、記事末尾の「この記事について」および当院スタッフ紹介ページをご覧ください。

10. よくあるご質問

Q. いびきをかいているだけでも受診したほうがよいですか?

いびきは、睡眠中に気道が狭くなって周りの組織が振動して起こります。睡眠時無呼吸を疑う手がかりの一つですが、いびきだけで無呼吸があるとは判断できません。日中の眠気や、呼吸が止まっているという指摘を伴う場合は、一度医科への受診をおすすめします。

Q. 市販のいびき防止マウスピースではだめですか?

市販品は既製のサイズで、下あごの前方移動量を調整できません。合わない装置を毎晩使うと、かみ合わせのずれや顎関節の痛みにつながることがあります。また、そもそも無呼吸があるかどうかは検査でしか分かりません。市販品で症状が「隠れて」しまい、医科への受診が遅れることが最大のリスクです。

Q. マウスピースに副作用はありますか?

装着し始めの時期に、あごの違和感、歯の圧迫感、朝のかみ合わせのずれ感、唾液が多く出るといった症状が出ることがあります。多くは一時的ですが、長期使用によってかみ合わせがわずかに変化することが知られています。だからこそ、定期的な歯科でのチェックが必要になります。

Q. 保険は使えますか?

医科での診断があり、基準を満たしていれば保険適用となります。歯科の口腔内装置はAHI 5以上が目安です。ただし、紹介状(診療情報提供書)なしに保険で製作することはできません。詳しくは受診時にご確認ください。

Q. 費用や通院回数、治療期間はどれくらいかかりますか?

口腔内装置(スリープスプリント)は、医科の診断と紹介があれば保険診療で作製できます。当院では、問題がなければ計4回の来院(検査開始からおよそ8週間・約2か月)を目安に進めます。

  1. 検査と型取り(当院は口腔内スキャナー〈IOS〉で型取りします)
  2. 装置の試適と仮固定
  3. 使用感の確認と本固定(問題がなければ本固定します)
  4. 再評価と、医科への効果確認の検査依頼

装着後は、必要に応じて装置の調整や定期的なチェックのための通院があります。もともと当院の定期メンテナンスに通われている方の場合は、メンテナンスのなかで歯周組織の検査・顎関節・装置のチェックをあわせて行っていきます。

費用の目安です。装置の作製から医科への検査依頼までの一連の診療(初診料・再診料を除く)は、10割負担で約45,000円、3割負担の方でおよそ15,000円が目安です(お口の状態により前後します)。

このほかに、初診料・再診料が別途かかります。また、装置を安全に作るための準備として、歯周病やむし歯の有無を確認する歯周組織検査やパノラマX線検査、型取り(印象採得)の前に必要となる歯石の除去や口腔清掃の指導なども、お口の状態に応じて別途費用がかかります。

なお、上記の費用に、医科でかかる費用は含まれません。睡眠の検査・診断や、CPAPなどの治療、装置装着後に効果を確認する検査などは、紹介元の医科で別途費用がかかります。医科でかかる費用は当院では分かりかねますので、受診される医科の医療機関にお問い合わせください。当院での費用の詳細は、受診時にご説明します。

Q. 治療はずっと続けるのですか?

現時点では、装置は「使っている間だけ効果がある」治療です。ただし肥満が原因の場合、減量によって重症度が下がり、治療内容を見直せることがあります。

Q. CPAPを使っていますが、つらくて続きません。

その状態を主治医にお伝えください。マスクの種類や圧設定の調整で改善することもありますし、口腔内装置への変更や併用が選択肢になる場合もあります。国際的なガイドラインでも、CPAPに耐えられない方への口腔内装置が推奨されています。自己判断で治療をやめてしまうのが、いちばん避けたい選択です。

11. まとめ

  • 閉塞性睡眠時無呼吸は、検査上の指標では世界で約9億人以上が該当すると推計される、決して珍しくない状態です(症状の有無は問わない推計です)。
  • ご本人には自覚しにくく、ご家族の指摘が受診のきっかけになることが多くあります。
  • 診断は医科で行います。当院を含む歯科では、SASの確定診断は行いません。
  • 治療の中心はCPAPですが、CPAPが使えない・希望されない方には、国際ガイドラインでマウスピース(口腔内装置)が推奨されています。
  • 無呼吸を抑える力はCPAPが優れますが、報告された使用時間はマウスピースのほうが長い傾向があり、生活の質などの面では差がつきにくいことが報告されています。
  • 口腔内装置は、医科の診断と、装置を支える歯ぐき・歯の管理がそろってはじめて、安全に続けられる治療です。

ご相談の前に ── あなたの状況に合わせた「次の一歩」

睡眠時無呼吸症候群への向き合い方は、いま置かれている状況によって変わります。ご自身に近いものを選んで、次の一歩の参考にしてください。

すでに医科で診断を受け、紹介状(診療情報提供書)をお持ちの方

医科の主治医から「歯科で口腔内装置(マウスピース)を作ってください」と言われた方は、当院で保険による装置の作製をご相談いただけます。紹介状をお持ちのうえ、ご予約ください。まずお口の状態を確認し、必要な準備を整えてから装置を製作します。

いびきや日中の眠気が気になるが、まだ検査を受けていない方

睡眠時無呼吸症候群かどうかは、検査でしか分かりません。そして、その診断は医科(内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠外来など)で行います。

「どこで検査を受ければいいか分からない」という方は、まず当院にご相談いただいても構いません。お口やあごの状態を拝見したうえで、検査ができる医科の医療機関へおつなぎ(ご紹介)することも可能です。医科で診断がつき、口腔内装置による治療が選択され、歯科的な条件を満たす場合には、当院で製作をご相談いただけます。

CPAPを使っているが、つらくて続かない方

その状況は、必ず医科の主治医にお伝えください。マスクの種類や圧の調整で楽になることもありますし、口腔内装置への変更や併用が選択肢になる場合もあります。国際的なガイドラインでも、CPAPに耐えられない方への口腔内装置が示されています。自己判断で治療をやめてしまうことが、いちばん避けたい選択です。装置についてのご相談は、主治医と相談のうえで当院までどうぞ。

いずれの場合も、口腔内装置は医科と歯科が連携して進める治療です。当院は、その歯科側の窓口としてお手伝いします。

ご来院をお考えの方へ

「いびきや日中の眠気が気になる」「これって睡眠時無呼吸症候群かもしれない?」「気になるけれど、どこの医療機関に行けばいいか分からない」──そんな方は、当院受診時にお気軽にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置(マウスピース)を保険で作るには、まず医科(内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠外来など)での検査・診断と、医科からの紹介状(診療情報提供書)が必要です。当院では、お口やあごの状態を確認したうえで、検査ができる医科の医療機関へおつなぎ(ご紹介)することも可能です。口腔内装置が適しているかどうかは医科の医師が診断し、適していれば当院へ紹介状が返ってきます。そのうえで、装置を支える歯ぐきや歯・かみ合わせの状態を確認しながら、製作を進めます。

すでに医科の紹介状をお持ちの方は、ご予約のうえご来院ください。

ご予約はお電話(Tel. 028-632-0033)または受付にて承ります。

アクセス・駐車場

亀井歯科・矯正歯科は、宇都宮市平松3丁目、産業通り沿いにあります。平松や平松本町はもちろん、上三川町や芳賀町など栃木県内、宇都宮市外からもご相談にお越しいただいています。敷地内に17台分の無料駐車場がありますので、お車でもお気軽にご来院ください(敷地内は全面禁煙)。

北からお越しの場合は産業道路入口交差点(国道123号・通称「石井街道」との交差点)を南へ1400m・進行方向左手、南からお越しの場合は平成通との交差点から北へ300m・進行方向右手です。フトン巻きのジロー平松本町店さんやクリナップ宇都宮ショールームさんの産業通りを挟んだ斜向かい、隣は田中商事さんです。

参考文献・出典一覧

  1. Benjafield AV, Ayas NT, Eastwood PR, et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med. 2019;7(8):687-698. リンク
  2. Ramar K, Dort LC, Katz SG, et al. Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy: An Update for 2015. J Clin Sleep Med. 2015;11(7):773-827. リンク全文PDF
  3. Sharples LD, Clutterbuck-James AL, Glover MJ, et al. Meta-analysis of randomised controlled trials of oral mandibular advancement devices and continuous positive airway pressure for obstructive sleep apnoea-hypopnoea. Sleep Med Rev. 2016;27:108-124.
  4. Schwartz M, Acosta L, Hung YL, Padilla M, Enciso R. Effects of CPAP and mandibular advancement device treatment in obstructive sleep apnea patients: a systematic review and meta-analysis. Sleep Breath. 2018;22(3):555-568. リンク
  5. McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, et al. CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea (SAVE trial). N Engl J Med. 2016;375(10):919-931. リンク
  6. Sánchez-de-la-Torre M, Gracia-Lavedan E, Benitez ID, et al. Adherence to CPAP Treatment and the Risk of Recurrent Cardiovascular Events: A Meta-Analysis. JAMA. 2023;330(13):1255-1265. リンク
  7. 日本呼吸器学会/厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 監修.『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』全文PDF
  8. 日本睡眠歯科学会.『閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置に関する診療ガイドライン(2020年版)』Mindsガイドラインライブラリ リンク
  9. 日本睡眠歯科学会. 教育要綱(保険適用基準を含む)リンク

この記事について

この記事は、本文中に挙げた診療ガイドラインおよび主要な研究論文をもとに作成しています。

執筆・医学的内容の確認
亀井 英彦(かめい ひでひこ)/亀井歯科・矯正歯科 院長
日本歯科専門医機構認定 歯周病専門医
日本歯周病学会 歯周病専門医・評議員
日本臨床歯周病学会 正会員
日本睡眠歯科学会 正会員

経歴
2005年 愛知学院大学大学院歯学研究科 修了(博士(歯学)/歯科保存学専攻)
2009年 愛知学院大学歯学部 歯周病学講座 講師/同附属病院 歯周病科 医長
2015年 亀井歯科・矯正歯科 院長(愛知学院大学歯学部 歯周病学講座 非常勤講師 ほかを歴任)

主な学術活動
歯周病と全身の健康に関する著書・論文・学会発表を行っています(例:著書『慢性疾患としての歯周病へのアプローチ 患者さんの生涯にわたるQOLに寄与するために』医歯薬出版 ほか)。詳しい業績一覧は、当院スタッフ紹介ページをご覧ください。

本記事は睡眠時無呼吸症候群についての一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。診断は医科の医療機関で行われます。検査・診断がご希望の方は、医療機関を受診してください。

公開日:2026年8月19日