宇都宮市平松3丁目、産業通り沿いの歯科医院「亀井歯科・矯正歯科」 院長の亀井英彦(日本歯科専門医機構認定 歯周病専門医)です。
前回の記事では、根管治療とはどんな治療か、そして当院の「使用する道具と治療前の環境づくり」についてお話ししました。今回は、その環境づくりの第一歩である「隔壁」と「ラバーダム防湿」についてご説明します。
根管治療の最大の敵は「唾液」です
根管治療は、歯の内側にある細い管(根管)のなかを処置する治療です。この根管に唾液が入ってしまうと、口の中の細菌がそのまま根管内に流れ込むことになります。
せっかく根管のなかを掃除しているのに、治療中に細菌を入れてしまっては意味がありません。根管治療では、根管に触れる前に、まず唾液を遮断するための準備を行うことが重要です。
隔壁 ── 歯のまわりに「壁」をつくる
むし歯が大きく進行している歯や、過去の詰め物が外れた歯では、歯の一部が欠けていたり、薄くなっていたりすることがあります。この状態のままでは、ラバーダム(ゴムシート)を歯にしっかり固定することができませんし、そもそも歯の周囲に壁(歯質)が残ってなければ、そこから唾液が浸入してしまいます。
そこで、まずレジン(歯科用の樹脂材料)を使って歯のまわりに壁を築きます。これを「隔壁(かくへき)」と呼びます。隔壁をつくることで、ラバーダムを安定して装着できるようになり、唾液の侵入をより確実に防ぐことができます。
この画像の、上側に見える白い材料がレジン(隔壁)です。歯に接着性のある人工樹脂で失った歯の壁を修復し、ラバーダム防湿(後述)をしています。隔壁がないと、歯の壁のない部分から、唾液が侵入するだけでなく、ラバーダム防湿自体ができません。
ラバーダム防湿 ── ゴムのシートで治療環境を隔離する
ラバーダムとは、薄いゴムのシートに小さな穴を開けて、治療する歯(もしくは、治療する歯とその隣接歯)だけをシートの上に露出させる方法です。これにより、治療中の歯が口の中の唾液や細菌から物理的に隔離されます。
画像でも分かるように、金属製のクランプ(ラバーダムを歯に固定する金属の器具)で、ラバーダム(薄いゴムのシート:写真では緑のシート)を歯に固定することで、治療環境に唾液が浸入しない環境を作り出します。
ラバーダムには、唾液の遮断以外にもいくつかの役割があります。根管洗浄に使う薬液がお口の中に漏れるのを防ぐこと。治療中に使う小さな器具を誤って飲み込むリスクをなくすこと。そして、術者が根管内の処置に集中できる視野を確保すること。
ラバーダム防湿は、国際的な歯内療法の教育では標準的な手技とされています。
ここで、ラバーダム防湿に関する科学的根拠のひとつをご紹介します。2014年に、歯内療法の分野で国際的に権威のある学術誌 Journal of Endodontics に掲載された研究があります。この研究では、初めて根管治療を受けた約52万本の歯を対象に追跡調査を行い、ラバーダムを使用した場合は使用しなかった場合と比べて、治療後に歯を抜歯するリスクが19%低かったと報告されています(Lin PY et al., J Endod 2014;40:1733-1737より引用)。歯科の研究で52万本ものデータを集めて、これだけ明確な差が出ること自体が、ラバーダムの重要性を示しています。
ただし、この研究の対象は「初回の根管治療」── その歯に対して初めて根管治療を行ったケースです。実際の歯科臨床では、過去に根管治療を受けた歯の再治療(リトリートメント)のほうが多く、当院でも日々行っている根管治療のほとんどは再治療にあたります。再治療では、以前の充填材料の除去や、見落とされていた根管への対応など、初回にはない工程が加わります。だからこそ、ラバーダムで清潔な環境を確保することは、再治療においても同様に ── むしろそれ以上に ── 重要だと考えています。
当院での実施状況
当院では、90%以上の根管治療でラバーダム防湿を実施しています。ラバーダム防湿を行う際、「歯の中に唾液が入らないように、ゴムのカバーを使用させて頂きます」とお断りさせ頂いてから治療をしています。
ただし、すべてのケースで使用できるわけではありません。歯の崩壊が大きくクランプ(ラバーダムを歯に固定する金属の器具)がかからない場合*や、患者さんの全身状態によっては別の方法で対応することもあります。(*ラバーダム防湿ができない根管治療は、治療をお断りすることがあります。)
地味だけれど、ここが出発点です
隔壁もラバーダムも、患者さんの目にはあまり見えない工程です。ただ、根管治療の結果を左右するのは、根管の中を触る技術だけではなく、根管に触れる前の環境整備にあると考えています。
次回は、もうひとつの準備である「CBCTとデジタルマイクロスコープ」── 見えないものを見るための道具についてお話しします。
ご来院をお考えの方へ
「亀井歯科・矯正歯科」は、宇都宮市平松3丁目の産業通り沿いにあります。産業道路入口交差点(国道123号・通称「石井街道」との交差点)から南へ1400m・進行方向左手、または平成通との交差点から北へ300m・進行方向右手です。クリナップ宇都宮ショールームさんやフトン巻きのジロー平松本町店さんから見ると、産業通りを挟んだ斜向かい、隣は田中商事さんです。敷地内に17台分の無料駐車場があります(敷地内は全面禁煙)。
根管治療について気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。















