以前から「失った歯の本数が少ない人は、失った本数が多い人に比べて、医科(病院)にかかる医療費が少ない」と言われてきました。つまり、歯や口の中の管理を、しっかりすることが、医科での医療費を減らすという意味です。
これは、いくつかの都道府県の歯科医師会と国保連合会等が共同で実施した調査結果でしたが、このほど、日本歯科研究機構が、いわゆるビッグデータ(たくさんの医療データの入ったデータベース)を分析し、「歯の数」と「医科での医療費」の関連性を調べたところ、同様の結果を得たということです。
(日歯広報, 第1675号, 3, 2016. 11. 15 より引用)
具体的には、40歳以上を対象に、歯が20本以上ある人と、19本以下の人のそれぞれのグループで、医科にかかる医療費を比較しています(補足:親知らずを除くと、ヒトの歯は28本ありますので、19歯以下というと少なくとも9本の歯を失っていることになります)。
その結果、男性では85歳未満において、女性では80歳未満のグループで、統計学的に有意な差が認められます。また、とくに若い年齢層においては、その結果が顕著であり、歯の本数が少ないグループでは、最大で1.2〜1.3倍の医療費がかかっていることが明らかになっています。
口は、身体の入り口ですので、歯の健康の維持と、身体の健康増進が関係していることは、当然と言えば当然かもしれません。口の中の病気の予防や管理(メインテナンス)に、よりいっそう力を入れたいと思うと共に、患者さんひとりひとりの理解を得る努力が必要だと思いました。
追加: こういう調査を疫学調査といいますが、「全く関連性がないと思われるもの」や「以前からうすうす皆が気づいていたこと」などが、調査結果で明らかになるという点が、非常に面白い点です。とくに、最近ではコンピューターの処理能力が飛躍的に向上したお陰で、ものすごく大きなデータ解析ができるようになり、歯科の分野でも、歯周病と身体の病気(糖尿病、心臓血管疾患、認知症等)との関係など、いろんなことが分かってきています。