2026年4月6日

よくある質問「子供の矯正、いつから始めれば良いんでしょうか?」

宇都宮市平松3丁目(旧平松本町)の亀井歯科・矯正歯科です。産業通り沿いにある歯科医院で院長をしています亀井です。
「先生、うちの子の歯並び、そろそろ矯正を始めたほうがいいんでしょうか」
宇都宮市平松周辺には、小学校が5校あり、来院中の保護者の方からこの質問を本当によくいただきます。当院でメンテナンス(定期ケア)をお受け頂いているお母様、小学校の歯科検診のお便りを見て急いで来られたお父様、保育園のママ友から「あの子、矯正治療を始めたらしいよ」と聞いて不安になったご家族。
質問の背景はさまざまですが、皆さんに共通しているのは「適切な治療時期を逃したくない」というお気持ちです。
結論を先にお伝えします。矯正のご相談にお越しいただくべき時期は、お子さんの歯並びのタイプによって変わります。
多くのケースでは、永久歯の前歯が上下合わせて8本生えそろった頃、年齢で言うとだいたい7歳から9歳あたりが、最初のご相談に適したタイミングです。ただし例外がひとつだけあります。受け口(反対咬合)のお子さんです。こちらは3歳から4歳頃と、少し早めに一度見せていただきたい、というのが当院の考え方です。
なぜこの「時期の使い分け」をお伝えしているのか、普段の診療室でお話ししている言葉そのままに書いてみます。
治療を検討したい歯並びは、だいたい5つのどれか
お子さんの歯並びの問題(歯列不正)は、細かく分ければ色々ありますが、治療介入が必要な歯並びのタイプは、次の5つのどれかに当てはまるケースがほとんどです。
1つめが「叢生(そうせい)」、歯がガタガタに混み合って生えている状態です。
2つめが「上顎前突」、いわゆる出っ歯。
3つめが「過蓋咬合」で、下の前歯が上の前歯にすっぽり隠れて見えないほど深く噛み込んでいるもの。
4つめが「開咬」、奥歯はしっかり噛んでいるのに前歯に隙間が噛んでおらず、前歯で細い麺やワカメや海苔等を噛み切れないようなタイプです。
そして、5つめが「反対咬合」、一般的に受け口と呼ばれる、下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせです。
このことについて、矯正歯科医である副院長(日本矯正歯科学会 認定医)ともよく話すのですが、この5つのうち、最初の4つのタイプ(叢生、上顎前突、過蓋咬合、開咬)は比較的似た時期に診断し、小児矯正治療(第一期矯正治療:学童期に実施する矯正治療です)をスタートできます。ところが受け口は、分けて考えないといけません。
なぜ基本は「7歳から9歳」でいいのか?
叢生・上顎前突・過蓋咬合・開咬の4つについては、上下の永久歯の前歯(上4本と下4本の合計8本)と6歳臼歯(奥歯)が生えそろう7〜9歳頃に一度見せていただければ、多くの場合、診断がつきます。7〜9歳頃と期間に幅があるのは、それらの歯が生えそろう時期が、その子によって異なるからです。成長速度はみんな異なりますからね。
もちろん、明らかに気になるところがあれば、もっと早くに来ていただいて構いません。ただ正直に言うと、あまり早い段階でお越しいただいても「今は成長観察して、治療開始タイミングを待ちましょう」と、経過観察に落ち着くことがほとんどです。
上下の永久歯の前歯(上4本と下4本の合計8本)と6歳臼歯(奥歯)が生える前なら「焦らなくて大丈夫です」というのが現場の実感です。
受け口(反対咬合)の場合は、3〜4歳のうちに一度見せてほしい
一方で、受け口の傾向があるお子さんは配慮すべきことが変わります。できれば3〜4歳のうちに、一度ご相談いただきたいのです。
理由は、上の顎と下の顎で、成長のピークを迎える時期がズレているからです。上顎は比較的早い時期に成長しはじめ、9歳ぐらいには大人の約90パーセントほど成長が進んでしまいますが、下顎はそのあと、身長と体重の伸びのスパート(いわゆる思春期です)に伴い成長します。受け口のお子さんの場合、上下顎の成長の特徴を知った上で、治療を考える必要があるからです。日本人の受け口の多くが、上顎の劣成長による相対的な受け口が多いことを考慮すると、早い段階で、上顎の成長を助けるための装置、ベロやお口周りの筋肉の使い方、そして、鼻呼吸(中顔面の成長にとって大切なのです)のための練習を開始していただく方が、理にかなっているからです。そして、大切なのは、その後、下顎の成長(思春期の成長)を見届け、二期治療で仕上げの治療が必要になる可能性が高いことをご理解いただくことが大切です。
*治療は症例により適応が異なります。診察・診断のうえで最適な治療時期をご提案します。
「3歳児健診で噛み合わせのことを言われた」「家族に受け口の人がいる」「どうも上下の前歯の位置関係が逆な気がする」このいずれかに当てはまるようでしたら、様子を見ずに一度いらしてください。
実はこの「受け口」を含め、「歯列不正、不正咬合を治しましょう」という話には、ひとつ興味深いデータの裏づけがあります。東京歯科大学の歯科矯正学講座が、80歳以上で20本以上ご自身の歯が残っている方(いわゆる8020達成者)の噛み合わせを調べた研究です。
この研究の結果を2行で要約すると、このように言えます。
「歯が多く残っている高齢者の歯並びを調べてみたら、正常な噛み合わせが84.6%、上顎前突が15.4%、反対咬合と開咬は0%であった」

Dental Prescale®を用いた8020達成者の咬合調査. 歯科学報 2005; 105: 154-162より引用
つまり、80歳になっても自分の歯をたくさん残せている方々のなかに、反対咬合(受け口)と開咬(奥歯はしっかり噛んでいるのに前歯に歯の接触がない歯並び)の人は一人も含まれていなかった……ということです(この研究の被験者となった高齢者についての調査結果です)。
もちろん、これは「受け口の人はみんな歯を失う」という単純な話ではありません。ただ、「噛み合わせの不調和を抱えたまま何十年も使い続けることは、歯の寿命に影響し得る」という事実を、このデータは示唆しています。
だからこそ、身体の成長する力を利用できる幼児期のうちに、一度見せていただきたい、と私たちはお伝えしているのです。
矯正相談は、治療を始めるかどうかを決める場ではありません
最後にひとつだけ、お伝えしたいことがあります。
矯正のご相談は、歯並びや矯正装置、治療料金等に関する一般的なことを説明する場です。
それを踏まえ、お子さんの今の状態を一緒に見て、「今すぐ手を打つべきこと」「成長観察すべきこと」「ご家庭で気をつけてほしいこと」さらには「適切な治療介入時期」を整理する場だと思っていただければ大丈夫です。
治療を始めるか始めないかを、その場で決める必要は全くありません。
相談に行ったら治療を強く勧められそうで怖い、という声を時々耳にしますが、当院は、そのような方針ではありません。治療介入にとって適切な時期でなければ「まだ様子見で大丈夫ですよ」とはっきりお伝えします。
次回は、いざ矯正を始めるとなったときに必ず出てくる「第1期矯正治療」と「第2期矯正治療」という二つの治療ステージについてお話しします。
亀井歯科・矯正歯科
院長 亀井英彦(日本歯科専門医機構認定 歯周病専門医)
栃木県宇都宮市平松3丁目1−10